自分の親への無意識なパワハラを考える

「ウィッグをいくつか買って持っているんだけど、娘や息子がおかしいからやめて!と言うの。だから1回も使ってなくて・・・」

先日、こんなご相談をお受けしました。

拝見すると、自髪はかなり薄くなってしまっている状況。

「このままじゃ外出できないから帽子をかぶるんだけど、私は帽子はイヤなの。

ものすごく憂鬱よ・・・

 

この方はフルウィッグは抵抗があるということで、パーツウィッグをお持ちになっているのですが、娘さんや息子さんから見て「おかしい」ということは、ウィッグの大きさや色、質感などが自髪に合っていないことが原因と考えられました。

そこで、サロンにある在庫のなかでしっくりきそうなものをお探しし、お客様のスマホカメラでお撮りしたものをご家族に見ていただくことに。

すると後日、家族からも「すごくいい」と好評だったそうです。

ウィッグをつけることじたいがおかしいのではなく、自髪とウィッグがなじんでいないからおかしいのだということがご理解いただけたようです。

そして、引き出しにしまったままになっていたウィッグを今の髪の状態になじむようにカットし直すことで、お悩み解決となりました。

 

■親子間のパワハラに気をつけたい

 

このお話でドキッとさせられたのが、娘さんや息子さんたちの言葉にお母さまが傷ついているということでした。

私もついつい、自分の両親に対する言葉がきつくなってしまうことがあるからです。

私の母はとても几帳面で、いつもきれいに掃除をしている人でした。

ところが最近、洗面台が黄ばんでいたり、魚焼きグリルが真っ黒なままになっていたりするのです。

若い時からそうであれば驚かないのですが、とてもきれい好きな人なので、「いったいどうしちゃったの!?」というショックもあり、代わりに掃除をしてあげながら「ちゃんと掃除しないとダメじゃない」などと言ってしまうのです。

でも、よくよく考えたら私の両親はもう80代。

どんなに几帳面だった母でも、かがんで浴室の隅を掃除したり、魚グリルの掃除のように力のいる作業をしたりするのは無理なのでしょう。

できるならやりたいけどできない。というのが実際のところなんでしょうね。

娘や息子が年老いた親の心身の状態を理解することができず、「みっともない」「恥ずかしい」「もっとちゃんとして」などと口にしてしまう。

決して珍しいことではないと思います。

でもこれ、客観的に見たら一種のパワハラなんじゃないか・・・。

昔なら親もガンガン言い返してきたから、パワーバランスがとれていた。

でも今は親にそのエネルギーがなくて、向こうはただ黙って我慢しているのかもしれない。

そんなことを、このお客様のお話から気づかされたのです。

一緒に旅行や食事をしたりして親孝行をしているつもりでも、日常のなにげない言葉で傷つけてしまうようではいけないなと、深く反省したのでありました。