娘さんと2人でウィッグサロンにいらした70代の方のお話です。
2020年の年明けぐらいから病気で入院していたのですが、無事に退院。
その直後に新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、緊急事態宣言が発令されたのが4月上旬のこと。
「それからずっと娘にも誰にも会わず、自宅にこもって生活していたら髪が抜け始めて、大量に抜けちゃって。性格は明るいほうなのに、どうしてかしら・・・」
皮膚科で相談したところ、心因性と判断されたのか、「自然と治るから何もしなくていい」と言われたそうです。
「でもこんなんじゃ、とても気にしないでいられないでしょう?」
と、帽子を取って見せてくださいました。
想像以上に範囲が広く、後頭部の大半の地肌が見えてしまうくらい脱毛されていました。
内心びっくりしましたが、「部分的な脱毛でお悩みの方は意外と多いですよ。原因が解決すると髪が戻ることが多いようです」とお話ししました。
ただ、コロナも脱毛も「いつ治まるかがわからない」ところが不安の種ですね。
何より、毎日のように鏡で脱毛してしまった自分を目にするのは、とてもつらく憂鬱なことです。
★フルウィッグをつけた瞬間、明るい表情に
これから最高気温が30℃を切り始めれば、だんだんとフルウィッグでも大丈夫になってくるので、いくつかご試着いただきました。
そのうちの1つがとてもしっくりとなじんで、着けた瞬間、お母さまの表情が変わって、「えーっ?」という感じで明るくなったのがわかりました。
娘さんも「それ似合う! 毎日が美容院帰りみたいに見えるじゃない!」と喜ばれて、私もとてもうれしくなりました。
聞けば、娘さんと会って外出することじたいが約半年ぶりとのこと。
そのあいだ、誰にも会わずに生活されていたとなると、日々が孤独との闘いだったかと思います。
(私もフリーランスで一人暮らしが長かったので、誰ともしゃべらない生活のしんどさを知っているのです)
髪のことで憂鬱なとき、ウィッグ1つで気持ちが明るくなるということが本当にあるので、お買い物にいらしていただけて本当に良かったと思います。
ご自分の髪も少しずつ戻ることを願ってやみません。
なお、ウィッグを選ぶときは自然になじんで見えること(色やスタイルに違和感がないこと)が一番大事なので、3〜4種類の異なる色・スタイルのものを比べてみて、一番自然で素敵に見えるものを選ばれるとよいと思います。
このお客様も、3つのうちの1つは「夜のお仕事ふう」、もう1つは「湯川れい子さん」(映画評論家)と娘さんが評されて、選ばれたもの以外は笑いながらのご試着になりました。
「ちょっと冒険」というノリで、慣れない色やスタイルのものを選んでしまうと、いつも着ている服や小物とのバランスがとれず、使わずに終わってしまう恐れがあるので、ご注意を。