1970年創業。ウィッグの製造・販売・卸・コンサルティングを行っています。
東京・銀座の直営サロン”フローレン”では、自髪はもちろん、ウィッグの販売やメンテナンスも行っています。
増毛・育毛サービスで知られる大手企業に勤務後、独立・開業されたという代表取締役の井上靖二さんに伺いました。
?ウィッグ業界は参入する企業が増えて競争が激しくなってきていると思います。
どんな企業が伸びていきそうでしょうか。
大手2社が中心になっていくことに変わりはないでしょう。
いっぽう、最近ではウィッグを扱う理美容室も増えています。
自髪が少なくなっても、家の近くにある通い慣れたサロンでウィッグの相談ができれば、身近な場所で髪の悩みのすべてを解消できるようになる可能性があると思います。
?ウィッグはウィッグサロン、自髪のカットやカラーはヘアサロンと分かれていたものが、統合されていく可能性があるんですね。
ウィッグの大手企業の場合は、自髪のカット、カラー、パーマのサービスも行っていますが、そのサロンが家の近くにあるとは限りません。
美容師はお客様との信頼関係を築く仕事ですから、大切なお客様がウィッグの会社に移っていかれるというのは残念なことでもあります。
「急に来なくなったな」というお客様が、じつはウィッグの会社に移っていたということが実際にあるんです。
もともとは理美容室に通っていた方ばかりです。
?ただ、美容師さんには販売が苦手な方も多いと聞いたことがありますが。
はい。美容師は技術を売る仕事で、職人肌の人が多いですから、「ものを売りつけるようなことはできない」と思ってしまいがちのようです。
?何十万円もするウィッグを販売している会社もあって、「人の弱みにつけ込んで高額商品を売りつけている」というイメージを持っている人が少なくないのでは。
ウィッグ業界に対する不信感というものが、理美容業界にもお客様にもあると思います。
?ただ、最近はフルウィッグでも10万円以下だとか、より手頃な価格で販売する会社も増えてきましたね。
それでもまだウィッグは心理的なハードルが高いようです。
それより抵抗が少ないのがエクステ(増毛)です。
お客様にとっても、美容師にとっても、いきなりウィッグよりは受け入れやすいようです。
?ただ、自髪に植えつけるものなので、当然、自髪といっしょに抜けてしまいますよね?
はい。エクステは”使い捨て”ということになります。
それでも理美容室にとってはウィッグよりハードルが低いので、増毛サービスの会社に入会金を払って技術を学び、キットを購入して始める人が出てきています。
それで利益が上がればいいですが、失敗してしまうケースもあるようです。
?経営する側にとっては、エクステのほうが投資リスクが大きくなりそうですね。
ウィッグはそこまで投資をしなくてすみますが、最低限の知識は必要になりますね。
材料や製法に関する知識だけでなく、メンテナンスの技術も必要になります。
オーダーメイドなら型取りのしかたも学ぶ必要があります。
当社では、これらの勉強会を無料で行っています。
?ウィッグで1つ問題なのは、生産国や材料についての表示義務がないことです。
生産国はアジアのどこかだろうなと、なんとなく想像されますが、人毛が何%使われているかについては、知りたくても知りようがありませんね。
人毛の割合は商品によって違いますが、表示をしていないのが現状です。
また、使われている人毛の質や、ウィッグに使うための化学的な処理をきちんとしているかどうかなども、消費者は知りようがないですね。
当社はアジア地域の9つの工場と提携しており、特に質のよい人毛を調達できる工場を中心に製造しています。
?化学的な処理をしていない人毛が使われることもあるんですか。
人毛をウィッグに使う場合、キューティクルが残っていると絡んで使えなくなるので、まずキューティクルを剥がします。
すると白っぽい毛になるので、着色して、タンパク質でコーティングしていくんです。
質のいい人毛でないと、このような加工に耐えられません。
ですから、なかには質の悪い人毛を加工せずにそのまま使っているものもあると思います。
新品の状態だと、目で見て判断することはできません。
半年ほど使ったところで毛がひどく絡んでしまうようなものは、加工をしていない人毛が使われている可能性が高いと思います。
?人毛じたいが調達しにくくなっていると聞いているので、今後どうなるかが心配です・・・。
ところで、ベースのネットに使われる素材もいろいろなものが出てきていますが、いまだに「ウィッグは蒸れる」というイメージが根強いのでは。
当社のクール素材は、ファストファッションの大手企業がクールTシャツに使っているものと同じもので、肌触りがよいのが特長です。
通気性に限っていえば、昔のウィッグによく使われていたキメの粗いネットのほうがいいのですが。
?キメの粗いネットは、透けて見えてしまうと恥ずかしいですよね。
自髪が多ければ目立たないようにつけることも可能だと思いますが。
クール素材以外にも何か新しいものはありますか。
もう1つ、夏向けに開発したのが”泳げるウィッグ”です。
全面が肌色の薄いシリコンでできています。
つなぎ目がなく、凹凸感も全くありません。
肌に密着するのでピンで留める必要もありません。
?シリコンなら、旅行先でお風呂に入るときにも外れる心配がないですね。
はい。ベースのシリコンは濡れても簡単に乾きます。
においや汚れが気になるときは、アルコールのスプレーをかけて拭き取るだけでOKです。
ただ、肌に密着させて使うので、自髪があると逆に使いづらくなります。
脱毛が進んでいる方、無毛症の方に喜ばれています。
?ウィッグは加齢で髪が薄くなったときに使うイメージがありますが、医療的なケアが必要になったときのための商品も、どんどん改良が進んでいるんですね。
はい。最近は”見た目ケア”と呼ばれる活動が病院で広がり始めています。
メイクやネイルと並んで、ウィッグも活用されていますよ。
ウィッグはつける人だけでなく、家族の気持ちも明るくしてくれるツールの1つだと思っています。
価格や販売法に対するネガティブなイメージを払拭できるよう、コツコツ頑張っていきたいと思います。
お忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました!